■もしも平安時代に携帯電話が普及していたら■

時は平安一条朝―。
この時代に「もしも携帯電話が普及していたら」という空想を前提に、殿上人や公達の会話をちょっと覗いてみます(笑)。

■四納言の場合■

後に四納言、と呼ばれ前漢の四賢と並び称される方々はどんな具合でしょう。
(ここでは、官職名を省き、実名同士で呼び合っておりますのであしからず)

斉信「最近『少し春ある心地こそすれ』というタイトルのチェーンメールを女房たちに流しているのは卿であろう公任!」
公任「何を証拠にそのようなことを。貴殿こそ、自ら朗詠した『着ゴエ』を添付して回しているという噂があるが?」
斉信「あの『着ゴエ』は、お前も一緒に作ったものではないか・・・」
公任「そういえば・・・むむう。では、昨日私の屋敷へ来なかったのはどう理由をつける」
斉信「貴殿は『方違え診断』を利用していないのか?昨日まで、四条の方は大将軍の遊行中だったのだ」
公任「そ、そうであったか。陰陽寮の『物忌み診断』はマイリンクに登録しているのだが」

♪「蘭陵王」の着メロが流れます

公任「大殿(道長)からだ。・・・何々?『この屏風に合う歌を所望』。添付があるな。どれ」
添付ファイルを展開する公任。
斉信「あ、それは大抵の著名人には届いてるはずだ。先の帝のところにも届いたと聞いている」
公任「ほう、これは見事な屏風。行成殿、清書は貴方がなさるのでしょう?」

通りがかりの行成さんも同様にメールをチェック。

行成「ええ、今さっき道長様からご依頼がございました。イメージの構築を図る為、フォントは『ユキナリ』に設定してご送信お願い致します」
俊賢「むむ、私の携帯にはそのフォントが無いのですよ」
行成「それは難儀でしょう。世尊寺流から出ている最新機種には全て入っているはずですから、仲買いいたしましょうか」
俊賢「それはありがたい」
行成「あと、九条流や御堂流の携帯でも大丈夫なはずですよ。斉信殿に公任殿、そうですよね?」
斉信公任「無論だとも!」
行成「・・・ということです。この際ですからいっそのこと、会社も『源』から『藤原』に変えませんか?今なら通話料もお徳ですよ」
俊賢「むむ・・・矢張り大手に加入すべきだろうか」

実資さんは日記『小右記』に「近頃は小野宮流の機種を使うものが少なくなり痛切の極みである。九条流や御堂流を率先して使う
公任や斉信などは、道長への追従から携帯しているに過ぎない」
と愚痴をこぼしておられるそうです(爆)。
ちなみに、小野宮流の機種は中高年にも優しい最低限の機能のみを備えたタイプをより多く取り揃えております。

■道長の場合■

道長「犬がいつもよりよく吠えておるな。これは何かの前触れか・・・どれ、吉平に尋ねるとするか」
♪プルルルルルル
吉平「はいこちら陰陽師・安倍吉平。如何されました?」
道長「ちと、犬の様子がおかしいのだ」
吉平「では、どんな具合かちょっと送って頂けますか」
道長「あい分かった」
ムービー写メールモードで犬の様子を10秒間撮影。送信。
吉平「あー、これはいけませんね〜。『陰陽寮』の公式サイトにアクセスして頂いて、呪詛返しの札と呪文をダウンロードしてお使い下さい」
道長「矢張り呪詛であったか。いや、助かった」
吉平「またのご利用、お待ちしております」

■女房たちの場合■

和泉式部「また出会い系サイトで、フリーの親王見つけちゃった〜vvv今夜にでもオフで会うの」
清少納言「私もよ。私の場合は出会い系じゃなくて、運営してる『枕草子』っていうサイトに書き込みしてくれたファンなんだけど〜」
紫式部「相変わらずはしたない人たちね」
清少納言「あら、貴女だってメールマガジンで『源氏物語』とかいうのを発行してるんでしょ?道長様や公任様に声かけられたって聞いたわよ?」
紫式部「ぎくっ」
小式部内侍「それよりお母様におば様方、斉信様や定頼様の着ゴエお聴きになりました?」
大弐三位「もう、悶絶モノの朗詠や読経揃いですわよ!」
相模「それより、行成さまがお書きになった『和漢朗詠集』の壁紙の無料ダウンロード期間中ですってよ!」
―----------------------------------------------------------------------------------------------------



・・・と、こんな感じではなかろうかと、アホな想像をしてしまいました(爆)。
あくまでお遊びですので、どうかご容赦下さい。
時代や人物関係は一部ゴチャ混ぜになっておりますのであしからず(汗)。
平安人に携帯持たせたら、さぞ使いこなすだろうなあと思って書いてしまいました(笑)。


<<back