■400年の邂逅
直江の居ないベッドで、一人昔の夢を見た―。 まだ直江を「御館の敵」としてみていた頃の自分を。 いつ頃からだったろう、無意識に直江の気配を探るようになったのは。 最初は、確かに憎んでいた。 甲斐甲斐しく介護をされた後でも、気を許してはならないと。 弱い己を戒めた。 信頼してしまえばまた裏切られる――― 今は遠くなってしまった直江津の波音と、相模の浜の悪夢を思って身震いした。 ダメだ―。 裏切られて傷付けられるくらいなら、初めからアテニナドスルナ。 景勝が死んだ頃だろうか―。 気がつくと、視線が直江を追っていた。 そして直江の視線もまた、俺を捕らえていたのだ。 直江がそばに居るのが当たり前になって、 今度はその眼差しの真偽を確かめる為に、俺は振り向かなくなった。 見返り無くしては成り立たないような、そんな安っぽい執着など一瞬で消え去ってしまう。 400年、俺は直江に何の見返りも与えなかった。 ましてや労いの言葉など―。 自らを「狗」と言う男だ、「出来て当然」。 そう立場づける自分の、なんたる傲慢。 それでも俺は―――。 夢に魘されて、俺は汗の中、まぎれて光るモノを見た。 己自身の弱さの涙―。 けれど。 今は直江がそばに居てくれる、それだけが全て。 弱さも忌々しさも、強欲さも貪欲さも全て。 俺の生み出すものがお前の全てになるのだから―。 だから、早く帰って来い。 直江―――。 |
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400年は長すぎますね・・・>邂逅編読むとつくづく。